小さな風の音が聞こえる、そんな静かな午後。久しぶりに安芸高田市の実家へ帰って、縁側で母と話していたときのことでした。会話の流れの中で、母が「あれ?あんたの名前、なんだったっけ」と笑いながら言ったのです。
一瞬、胸の奥がざわついたけれど、それを表に出すことはしませんでした。「ちょっと疲れてるだけだろう」と自分に言い聞かせながら、その日から僕の頭の中に「グループホーム」という言葉がじわりと広がっていったのです。
安芸高田市のグループホームには“人のあたたかさ”があった
安芸高田市には、地域に根ざしたグループホームが点在していて、そのどれもが、家庭的な雰囲気を大切にしていると聞きます。施設というより“第二の家”という言葉がぴったりで、そこに暮らす人たちは、まるで親戚のように支え合っているのだとか。
実際、僕が資料で見たある施設では、地元の季節行事や畑仕事、手作りの食事なんかが日常の中にあって、「こういう暮らしが老後の理想なのかもしれない」と思えるくらい自然体でした。
大きな病院のような完璧さじゃなくて、ちょっとした不便も含めて、そこに“人の暮らし”があるんだなと感じさせられたのです。
家での介護と、地域での見守り。どちらも“愛”だと思う
介護って、家族の思いや覚悟だけでなんとかなると思っていた時期もありました。でも実際には、日々の介助に疲れ、言葉を交わす余裕すらなくなることもある。そんなとき、グループホームのような存在が近くにあるということは、心を支える大きな支柱になるんだと思います。
「家で看ることだけが愛じゃないんだな」と、最近やっと思えるようになりました。むしろ、よりよく暮らせる場所を探してあげることも、立派な愛情のかたちなんですよね。
安芸高田市という土地に、家族の未来を委ねてみようかと思った
緑に囲まれた安芸高田の風景は、母が若い頃から愛していた場所です。その場所で、静かに、でも笑顔を絶やさずに過ごせるなら、それはきっと幸せな選択になる。
グループホームに預けるという選択に、まだ少しだけ迷いがあります。でも、いつかその日が来たとき、「この町なら、大丈夫」と思えるように、今から少しずつ、準備しておきたいなと感じています。
